からゆきさんを描く葛藤(書評:森崎和江『からゆきさん:異国に売られた少女たち』東京:株式会社朝日新聞出版2016.8[底本は、朝日新聞社1980.11とし、改題。原書は、朝日新聞社1976.5])
日本における女性史の先達、森崎和江。同時期に森崎に助言を求めてからゆきさんを調査した山崎朋子が、底辺女性史として『サンダカン八番娼館』を著して大宅壮一ノンフィクション賞を受賞するなど時代の寵児となる一方、研究者から圧倒的な支持を受けていたのは森崎和江の作品だった。世間一般と研究世界の評価の違いはどこにあるのか。『からゆきさん』はじめ、一連の森崎作品から読み取る。